静岡県伊豆市にある旭滝に行きました。と言っても、コロナが蔓延する前のことなので、訪れたのは2018年7月のことになります。
約150年前までは旭滝の近くに瀧源寺(ろうげんじ)という虚無僧寺があったそうです。尺八本曲 瀧落之曲(または「瀧落」)は6段に折落するこの滝をモチーフに作られたのだとか。
整備された場所。車じゃないと訪れるのは難しいかもしれません。
歩みを進めると真っ先に目に入るのは大きな岩の碑。
『虚無僧史跡 功徳山 瀧源寺跡 瀧落之曲 発祥地』と刻まれています。碑の裏面には、この碑を建立する為尽力された方々のお名前が彫られていました。案外近年に設置されたものでした。
こちらの石に彫られた由緒書きにはこのように書かれています。
「 この地は 北条早雲の第三子 幻庵宗哲公(1493~1589)の時代から尺八にゆかりの深い土地でありましたが さらに徳川時代には 滝の麓に功徳山瀧源寺という虚無僧寺が開創されて多くの虚無僧たちが修行のために出入りするようなりました いま残っている尺八の名曲「滝落」もここで作曲されたといわれています
この碑は 当地の由緒ある虚無僧史蹟を長く保存するために 全国の尺八道人の協賛を仰いで建立したものであります 修善寺町 」
記録を残す方法は色々あり、石に刻む というのは超原始的にも思えますが、案外一番長く“残す”には適している気がしました。
旭滝。「やっと会えましたね…!」という気持ち。
水が滔々と流れる様というのは大変に心が潤うものです。自然の少ない街で暮らしていると、水を飲んでも飲んでも癒せないたまらない渇きを覚えることがあります。
当時の私もそんな状態でどこか川や滝などへ行きたいと渇望しており、旭滝へ訪れた際は乾いた土に水がしみこむような、大変安らいだ気持ちになりました。そういえば水川寿也様作曲の『涼流(尺八・箏)』もよく聴いていました。
お城の石垣のように人が組んだようにも見えますが、この石壁も自然の力によるものです。大きくもなく、小さくもなく、親しむにはちょうど良い大きさの滝でした。
滝の右側にある階段で上へ登ります。
上からの景色。
そして、七つ並ぶ虚無僧の墓碑。
今はもういないけれど、確かに生きたその証。
ここに書かれている通り、瀧源寺のご本尊は旭滝からそこまで遠くない場所にある「金龍院」というお寺に安置されています。そこへも旭滝の後に行ってきました。
道の終わり、不動明王が見守る場所、目の前で水が流れ落ちていく絶好の献奏ポイントです。もし尺八を吹けたら、ここで瀧落を吹けたらとても良いですよね。
手すりにいた極小のアマガエル。とてもかわいい。
この日は霧雨一歩手前の天気でした。
旭滝を後にし、瀧源寺のご本尊があるという金龍院へ向かいます。
確か徒歩で行ったと思います(うろ覚え)
誰もおらず、静かでのどかです。文月の梅雨と夏の間。枯れかけの紫陽花も。
どこもかしこも、目に入るもの全てがきれいだと思いました。
金龍院。中に入りお参りさせて頂きました。
今を生きる虚無僧の方々が、コロナ禍を無事に乗り切れますように。世の中が落ち着いたら、何年かかけてになるかもしれませんが、またゆっくりと各地を巡りたいものです。
『悠々千古心』Web site▶ https://www.yuyu-senkono-kokoro.com
日本各地を巡り、虚無僧、虚無僧所縁の地、尺八関連の写真を撮影しています。悠々千古心とは『永遠の昔から永遠の未来へと生き続ける心』という意味の禅語のひとつ。その言葉のように、虚無僧という文化を通じて己が生まれ育った日本と、時の流れを感じられたらと思っています。
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